経営者の右腕として未踏に挑む。人と組織の力でディープテック企業の成長を加速する
UntroDメンバーインタビュー|バリューアップ / HR 松澤 俊明
組織人事コンサルティング会社からHRTech・保育Techベンチャーへ。CHROとして人事制度の立ち上げから組織開発までを一気通貫で担ってきた松澤俊明氏。原体験を遡れば、小学校時代の応援団——本気で走る人を全力で応援するときの熱量こそが、彼を今の仕事に運んできた。「人事制度は極論、なくてもいい。納得感があればいい」と言い切る彼が、20社前後の投資先と紡いでいるのは、ロジックだけでは動かない組織のための「運用可能な最適解」だ。なぜ次なる挑戦の場としてディープテック・スタートアップ支援を掲げるUntroDを選んだのか。応援団から始まった一貫した姿勢と、CHRO経験を通して見えてきた組織の本質、そしてディープテックという長い時間軸の挑戦への共鳴について、じっくりと話を聞いた。
投資先との濃密な連携が生む、ハンズオン支援の最前線
——まずは、松澤さんがUntroDにおいて担われている役割や、日々の具体的な業務内容について教えていただけますか。
私は現在、UntroD Capital Japanのバリューアップチームに所属し、投資先の支援業務を担当しています。
その中でも特に、HR(ヒューマンリソース)領域を専門としています。
具体的には、投資先企業の人事や労務、組織開発、組織づくりといったテーマに関して、ハンズオンでの支援を行っています。
投資先の方々と日々お話しさせていただく中で、ご相談いただく内容の約7割は、CXO(最高責任者)クラスや事業のキーマンとなる人材の採用に関するものです。
残りの3割程度が、採用以外の人事領域にまつわるご相談です。
たとえば、人事制度の設計や運用など、組織の基盤づくりに関する相談に乗らせていただいています。
——松澤さんがUntroDに入社されたのはいつ頃で、どのような経緯があったのでしょうか。
私が入社したのは2024年の11月1日です。
経緯としては、転職プラットフォームを通じてご縁をいただいたことがきっかけでした。
当時、前任者がバリューアップチームの中でHR領域を一手に担っており、非常に奮闘されていたのですが、支援先の増加に伴いマンパワーが不足している状況でした。
そこで増員を図りたいというタイミングで声をかけていただき、入社に至りました。
——入社されてから実際に働いてみて、チームの雰囲気や働きがいをどのように感じていらっしゃいますか。
チームの人数は決して多くありませんが、その分、一人ひとりが自分のやるべきことを明確に理解し、遂行していくという、非常にシンプルで分かりやすい環境です。
また、投資先の皆様と直接コミュニケーションをとらせていただく機会が非常に多く、一定の裁量を持って自由に働かせていただいていると感じています。
やりがいという点では、まだ入社して日が浅く、長期的な結果が見えるのはこれからという部分はありますが、確かな手応えを感じています。
各投資先のCEOと膝を突き合わせて採用戦略を練ったり、CXO候補の方々と面談を重ねたりする中で、実際にご入社いただいた方が活躍されている姿を拝見できるのは、大きな喜びです。
——少人数のチームでありながら、関わる投資先や関係者の数は非常に多いのですね。
おっしゃる通りです。
投資先とのコミュニケーションの幅は想像以上に広く、それが大きなやりがいにつながっています。
現在、20社前後の投資先の社長や経営陣の方々と定期的にお話しさせていただいています。
さらに、CXOクラスの候補者の方や、ハイクラス人材を紹介してくださるエージェントの方々とも並行してやり取りを行います。
投資先ごとに事業フェーズも組織の特徴も異なりますので、一つとして同じパターンはありません。
グロースマネージャーと同様に幅広い領域や多様な人々と接する機会がある仕事だと感じています。
——投資先の経営者からは、どのようなニーズや悩みが寄せられることが多いのでしょうか。
やはり、「人」に関する悩みは尽きないというのが実感です。
特に組織の人数が増えれば増えるほど、コミュニケーションラインが複雑化し、それに伴うコストや摩擦といった課題が必ず生まれます。
加えて、日本全体の労働人口が減少していく社会環境の中で、自社にフィットする優秀な仲間を見つけること自体が非常に難しくなっています。
これは一企業の努力だけで解決できる問題ではなく、社会的な構造課題でもあります。
そうした厳しい環境下で、組織づくりに奮闘される経営者の皆様の悩みは深く、切実なものが多いと感じています。
応援団から、経営者の右腕へ——一貫する「応援する人」の生き方
——ここからは松澤さんのルーツについてお伺いします。これまでのキャリアを形成する原点として、学生時代はどのようなことに打ち込んでいたのでしょうか。
学生時代は経営学部に所属し、特に「ベンチャー企業の経営チーム」について研究していました。
なぜそのテーマを選んだかというと、将来は「社長の右腕になりたい」というキャリアイメージを持っていたからです。
少し笑い話のようですが、自己分析をした際に、自分自身が先頭に立って「俺が社長だ」とグイグイ引っ張っていくタイプではないなと感じていました。
しかし、事業を動かしていくことには強い関心がありました。
そこで、社長の右腕として参謀のように機能するポジションが自分には合っているのではないかと考えたのです。
では、その「右腕」や「経営チーム」とはどのような構造で、どのように組成されるべきなのか。
それを解明したくて、かなり前の話になりますが、ベンチャー企業の経営体制について研究をしていました。
1社目に人事系コンサルティング会社を選んだのも、そうした「経営者の右腕」になるためのスキルを磨きたいという想いからでした。
——学生時代からご自身の適性を冷静に分析され、現在のお仕事に直結するテーマを研究されていたとは驚きです。参謀的な役割がご自身の性格に合っていると感じた、具体的なエピソードはありますか。
振り返ってみると、アルバイトの経験などでも、自然とそうした立ち位置になることが多かったように思います。
経営者やリーダーの意図を汲み取り、彼らの右腕となって直接指示を受けながら、現場を動かしていく。
そうやって物事が円滑に進み、事業が回っていくプロセスそのものに面白さを感じていました。
そうした働き方が自分にとって心地よく、また能力を発揮できるスタイルなのだと、当時から漠然とですが確信していました。
——その後、組織人事コンサル、人材ベンチャーでの採用、CHROなど、一貫して組織や人に関わるキャリアを歩んでこられました。これらをつなぐ、より根源的な原体験のようなものはあるのでしょうか。
さらに遡ると、小学校時代に応援団をやっていた経験が大きく影響しているかもしれません。笑
根底として、「人を応援すること」が好きなのだと思います。
もちろん自分自身がプレイヤーとして走ることもありますが、それ以上に、本気で走っている人を全力で応援することに喜びを感じ、そこに熱量が乗るタイプなのです。
現在の仕事も、命懸けで事業に取り組む投資先の経営者やチームを応援する役割です。
少しこじつけに聞こえるかもしれませんが、私の中では小学校時代の応援団から今のキャリアまで、一本の線でつながっている感覚があります。
人事制度は、なくてもいい——感情と関係性が動かす「納得感」のデザイン
——1社目のコンサルティング会社での経験が、今の支援スタイルのベースになっているとお聞きしました。具体的にどのような知見を得られたのでしょうか。
1社目は組織開発をメインとする人事系コンサルティング会社で、教育研修や人の行動変容に関する深い知見を持っていました。
そこで学んだ「メンタルモデル」や「チェンジマネジメント」、あるいは今でいうコーチングに近いアプローチ手法は、今の私の仕事の基礎となっています。
組織や人は、論理的な正しさだけでは変わりません。
心理的なアプローチを駆使しながら、その人が本来なりたい方向へ近づけるよう支援したり、成功体験を積めるよう導いたりすることが好きですね。
たとえば、娘が逆上がりできるようになった姿を見るのが嬉しいのと同じような感覚で、支援先の組織や人が成長の壁を乗り越え、できるようになっていくプロセスに立ち会えることは、私にとって最大の喜びです。
——スタートアップの経営支援、特にチームビルディングにおいては、まさにそうしたメンタルや関係性の側面が重要になりそうです。日々の支援の中で難しさを感じる点や、工夫されている点はありますか。
おっしゃる通り、人と組織はロジックだけでは動きません。
頭では「こうすべき」と決めても、感情が追いつかなかったり、関係性の問題で実行されなかったりすることが大いにあります。
どんなに素晴らしい戦略や制度を作っても、運用されなければ全く意味がありません。
ですので、私は「人事制度は極論、なくてもいい。納得感があればいい」と考えています。
ベンチャー企業でよくあるのが、最初から大企業のようなカチッとした人事制度を作ろうとして、運用しきれずに形骸化してしまうケースです。
「面倒くさい」「やりたくない」という感情が先に立ってしまうと、どんなに精緻な制度も機能しません。
それならば、最初は多少粗くても、現場のメンバーが「これならできる」と思えるスモールな仕組みから始め、全員が納得して運用できる状態を作ることのほうが重要です。
投資先への支援では、ロジックで完璧な正解を押し付けるのではなく、相手の感情や置かれている状況、周囲との関係性を丁寧に汲み取りながら、「運用可能な最適解」を一緒に探るよう心がけています。
——あえて制度を作り込みすぎず、現場の納得感を優先するというのは、非常に実践的なアプローチですね。そうした支援を行う上で、ご自身が大切にしているポリシーはありますか。
「相手の状態や感情を汲み取りながら、柔軟なフォロー体制を築くこと」をポリシーとしています。
もちろん、ゴールに向かって最短距離で進めるのが理想です。
しかし、人間関係や組織の課題は一筋縄ではいきません。時には回り道が必要なこともあります。
最初から決めつけすぎず、状況に応じて軌道修正ができるよう、常に伴走しながらフォローし続ける姿勢を大切にしています。
——そのポリシーが奏功した成功例や、逆に難しさを感じた失敗例があれば教えてください。
成功例としては、ある投資先のCEO・COO採用のケースがあります。
当初、しっかりとした要件定義を行いましたが、ご紹介した候補者の方と面談をするたびに、経営者の方の考えや求める像が少しずつ変化していきました。
そこで、当初の要件に固執するのではなく、面談後のフィードバックを通じて細かく認識をすり合わせ、軌道修正を繰り返しました。
その結果、最終的には当初の定義とは少し異なる形になりましたが、企業にとって真にフィットする方の採用決定に至りました。
これは、変化を許容し、粘り強くフォローし続けた結果だと思っています。
逆に、支援が長期化してしまっている案件では、私が投資先の経営者や組織の感情、隠れたニーズを十分に汲み取れていないことが原因だと感じています。
フォロー体制が追いつかず、相手の深い部分での納得感を引き出せていない場合は、なかなか採用や組織改善が進まないという難しさを痛感しています。
大企業からディープテックへ。人材流動が日本の未来を拓く
——UntroDでの活動を通じて、今後成し遂げたいミッションや、ご自身の役割の延長線上にある展望についてお聞かせください。
大きく二つの目標があります。
一つは、UntroDが掲げるビジョンの実現です。
ディープテック・ベンチャーが日本を変え、世界を変えていく。
その未来を実現するために、成長ポテンシャルのある領域へ、優秀な人材が集まる流れを作りたいと考えています。
もう一つは、より社会的な視点になりますが、「大企業からベンチャーへ」という人の流れを当たり前のものにしたいという想いです。
社会課題の解決や未来の創造に向けて、リスクを取って挑戦するスタートアップで働くことも、キャリアの一つだと思います。だと思います。
そうした「これから未来を作る場所」に、多くの人が流れてくるような社会構造に変えていきたい。
それが日本の産業全体を活性化させることにつながると信じています。
——大企業のサイロ化や人材の硬直性が課題視される中、非常に重要な視点だと思います。大企業とベンチャー、社会と個人の間に横たわるギャップについて、どのようにお考えですか。
未来がどうなるか分からない不確実な時代において、一つの場所に留まり続けることは、個人にとってもリスクになるのではと考えています。
仮に結果としてうまくいかなかったとしても、「分からなかった」「何もできなかった」で終わるのではなく、自ら挑戦し、試行錯誤した経験を持つことが、個人のキャリアを守る武器になります。
これからは、一度スタートアップに挑戦して、また大企業に戻るというような、柔軟なキャリアパスが許容される社会になっていくべきですし、個人もそうした環境を求めて動き出すべきだと感じています。
——そうした時代において、個人がキャリアを切り拓くために必要なスキルやマインドとは何でしょうか。
AIの進化やリスキリングの重要性が叫ばれていますが、根本的に最も重要なのは「やりきる力(グリット)」だと考えています。
どんなに高度なスキルを学んでも、それを実際の現場で使いこなし、結果が出るまで諦めずに試行錯誤し続ける力がなければ、価値にはつながりません。
そして、この「やりきる力」は、座学では身につきません。
実際に何かに挑戦し、失敗し、そこから考えて修正するという「思考と行動の試行回数」を増やすことでしか磨かれないものだと感じています。
グローバル化が進み、あらゆる情報がオープンになる中で、ただ言われたことをこなすだけでは生き残れません。
いくつになっても新しい環境でチャレンジし、思考停止せずに考え抜く姿勢こそが、最強のポータブルスキルになるのではないでしょうか。
型なき領域に「型」を創る。全員が勝てる支援を目指して
——最後に、UntroDへの参画を検討している方や、投資先の方々へのメッセージをお願いします。
UntroDの最大の魅力は、投資先に対して真摯に向き合い、泥臭いハンズオン支援を徹底している点にあります。
「資金を出して終わり」ではなく、組織の課題や事業の悩みに一緒になって悩み、解決策を模索する、そうした体制や姿勢がカルチャーとして根付いている点は、非常に素晴らしいと感じています。組織づくりにも事業成長にも、万能な「正解」や「型」は存在しません。
しかし、ないからこそ、投資先の皆様と一緒になって、その会社ならではの「勝てる組織の型」を創り上げていくプロセスに価値があります。
私たちは、投資先の皆様、そしてその先にいるLP(出資者)の皆様も含めた全員がハッピーになれるよう、黒子として、時には右腕として、全力で支援させていただきます。
未踏の領域に挑むことは決して楽ではありませんが、その分、得られる景色も格別です。
この挑戦を共に楽しめる方と、ぜひ一緒に働きたいですね。
松澤 俊明
UntroD Capital Japan株式会社
バリューアップ / HR
2024年にリアルテックファンドを運営するUntroD Capital Japanのバリューアップチームに参画し、投資先の人事支援を担当。
入社以前は組織人事コンサルティング会社やECサイト運営会社で法人営業に従事し、人材ベンチャーで新規事業のHRBP、子会社の設立を経験。
その後、HRTech、保育Techベンチャーにて人事部門立ち上げ、CHROとして人事、経営企画など幅広い業務に携わる。国家資格キャリアコンサルタント。