Top Our Solutions Our Impact Our Portfolio About Us News Recruit Contact
Top Our Solutions Our Impact Our Portfolio About Us News Recruit Contact
  • Top
  • News
  • 疾患のもととなる活性酸素を除去し、休まず働き続ける「レアアースの新薬」。無機材で創薬の新たな可能性を生むアプローズファーマ
2026年4月22日

疾患のもととなる活性酸素を除去し、休まず働き続ける「レアアースの新薬」。無機材で創薬の新たな可能性を生むアプローズファーマ

新薬の研究は世界中で続けられていますが、その多くは有機・バイオ材料を使っています。そんな中、無機材料を用いて開発に取り組んでいるのが、創薬ベンチャーの「applause Pharma (アプローズファーマ)」です。素材に選んだのは希土類元素とも呼ばれる「レアアース」。鉱物から抽出される17の元素の総称です。レアアースを新薬の材料に選んだのはなぜか、従来の治療薬と比べて何が優れているのか。同社を率いる川口恒隆さんに詳しく聞きました。


株式会社 applause Pharma (アプローズファーマ)
2021年5月設立。代表取締役は川口恒隆氏。酸化ストレスから来る疾病の予防・治療に、レアアースの持つ高い抗酸化作用が有効だとし、その特性を生かした「レアアース新薬」の開発に取り組む。腎疾患やアレルギー疾患、アルツハイマー病など、幅広い分野への貢献が期待されている。

※前提として、無機の原料を用いた薬は広く存在している。例えば、CMでもおなじみの便秘薬では、マグネシウム製剤が一般的に使われており、その他の領域では、鉄や亜鉛なども挙げられる。
また、レアアースを活用した医薬品の開発は全く行われていなかったわけではない。バイエル薬品社から発売されている「ホスレノール」は炭酸ランタンを用いた薬であり、世界中で販売されている。(ランタン:レアアースの代表的な元素、原子番号57)


レアアースの薬剤は「そこにある限りはたらき続ける」

川口恒隆(以下、川口):私たちの事業のユニークなところは、創薬の研究開発を、無機材料であるレアアースで行っているところです。創薬では通常、有機・バイオ材料を用いることがほとんどですが、これに比べて無機材料では研究開発費を抑えることができます。この費用面のメリットが、スピード感をもって研究を進められる理由の一つにもなっています。

レアアースの抗酸化作用を機序にした創薬研究は、すでに17年ほど続けています。現在の東京科学大学が東京工業大学だったころから弊社の研究員を派遣し、ESR(Electron Spin Resonance=電子スピン共鳴装置)を使った活性酸素除去の実験などをしてきました。現在の創薬は非臨床試験の段階に入っており、臨床開発に向けてさらに前進しているところです。

西村勇也(以下、西村):レアアースの抗酸化作用に注目されたのはなぜでしょう。無機材料を化粧品や医薬品に活用しようと思われた決め手があれば教えてください。

川口:抗酸化に効果的な有機化合物としては、アスコルビン酸がよく知られています。これは非常に優秀な活性酸素のスカベンジャー(補足剤)なのですが、一度反応が起きると酸化してしまい、それ以上の効果は得られません。でも、無機材料であるレアアースなら、そこに材料がある限り、ずっと活性酸素を除去し続けることができるのです。いわゆる触媒的なはたらきができるわけですね。アメリカでは、こうした無機材で酵素のような反応をするものを指して、「ナノザイム」という言葉もつくられています。我々はその点に注目し、これを産業化に活用しようと考えました。

西村:レアアースは体内に取り込んでも問題ないのでしょうか?

川口:人体に長期的に投与した実験や研究データはまだありませんが、基本的に毒性は少ないとされています。例えばレアアースの一つであるガドリニウムは、MRIの造影剤として安全性が確立されており、日本でも長く使用されています。

可能性大の能力だが、「抗酸化作用」だけではうまくいかない

西村:化粧品分野では実績がおありだとのことですが、医薬品への挑戦にはまた高いハードルがあると思います。医療用の薬剤として使用したとき、その抗酸化能力が発揮されることによって解決できる疾病は多いのでしょうか?

川口:そうですね。かなり多くの疾患が活性酸素によって起こるといわれていますから、この作用が持つ可能性は大きいと思います。そうした背景もあって、抗酸化能力をもつ材料で創薬開発にチャレンジされた例は、本当に数多く存在しています。ただ、結果としてはそんなにうまくいっていないというのも実情です。

西村:その難しい状況の中で、川口さんが抗酸化作用でのチャレンジを続けられるのはなぜですか。どんなところに勝機を見出しているのでしょうか。

川口:それはやはり、無機材であるレアアースを材料にしているということが非常に大きなポイントになっています。我々が医薬品の開発として取り組む化合物はDDS(Drug Delivery System=体内での薬物制御技術)の問題も少なく、ターゲットとなる臓器にきちんとデリバリーすることができます。研究の初期段階で、このDDSの信頼性がある程度わかっていたことも、私たちの背中を押してくれました。本当に違和感なく、今も「当然できるものであろう」と信じながら突き進むことができています。

「抗酸化能力のあるものは、これまでにもつくられてきたじゃないか」と言われることもよくあります。ただ、今までのものとはやはりかなり違うものであることを、自分たちでも理解しながら進めているつもりです。

西村:これまではどんなものがあって、それらはなぜうまくいかなかったのでしょう。貴社の創薬研究と対比できるような、抗酸化能力のあるものの前例を教えていただけますか?

川口:とても有名なのは、先ほど挙げたアスコルビン酸などですね。これはビタミンCとしても知られていて、栄養素としても体にとって大切なものです。ただこれは使い切りというか、一度反応が起こると、その後の効果は期待しにくくなるわけです。加えて、経口摂取で消化管から入っていくという点も、どれだけ体内に吸収されるのかを不確実にしていました。
しかしレアアースなら、無機材であるため、酵素様反応が継続する。ここが従来のものと一番違うところじゃないかなと思っています。

「酵素様反応」で、バランスよく酸化ストレスを軽減できる

西村:「酵素様反応」について、もう少し具体的に教えてください。レアアースがその反応をすることで、実際にどんなメリットがあるのかも知りたいです。

川口:例えば体内で発生したスーパーオキサイド(活性酸素の一種)を分解してくれる、SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)という抗酸化酵素があります。我々の化合物は、このSODと同様の反応を起こして、スーパーオキサイドを分解することができるのです。また、この活性酸素が代謝されてできた過酸化水素を無毒化し、酸素と水に分けるカタラーゼという酵素があるのですが、我々の化合物はこのカタラーゼと同じ反応を起こすこともできます。

つまり、体の中では活性酸素を代謝するために、SODとカタラーゼという2つの酵素を使っていますが、有効なレアアースを選べば、1つの材料でこの反応を完了させることができるのです。さらにどこか特定の臓器にこのレアアースを用いたときには、臓器が曝露している間は酸化ストレスを軽減し続けることができる。論理的には、こうした効果が成り立つわけです。これはすでに生体実験でも証明しましたが、いろいろな先生方に「今まで見たことのないようないい結果だ」という言葉をいただくこともできました。

西村:抗酸化の効果が持続的であること、臓器を明確にターゲティングできること、そして1つの材料で済むこと。この3つが特長であるということですね。

川口:ただ、活性酸素はなかなか複雑で、一筋縄ではいきません。スーパーオキサイドは炎症などで発生する活性酸素ですが、これをたくさん除去できるということは、たくさんの過酸化水素を発生させるということでもあります。さらに過酸化水素は、酸化力が強くて一番悪いといわれている活性酸素・ヒドロキシルラジカルのタネになるわけですから、とにかくスーパーオキサイドだけ消せばいいというものではないことがおわかりいただけるでしょう。大切なのは、やはり過酸化水素などを含めたバランスなのだと思います。

お話ししているレアアースの場合だと、多くのスーパーオキサイドを分解してしまったとしても、反応が繰り返し起こるので、そのあとに発生する過酸化水素を消去することができます。結果として、バランスよく酸化ストレスを軽減することになると考えています。

慢性疾患の患者さんにも、副作用の不安が少ない薬剤を

西村:いいことずくめで、ぜひ飲んでみたくなってきました。医薬品としては、特にどんなことを解消できる可能性があると考えていますか?

川口:やはり体の中の炎症を抑えることによって、疾患に対しての治療効果が期待できると考えています。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザの流行でも実感されたと思いますが、炎症が原因となって、いろいろな疾患につながっていくことは事実です。だからこそ、医師は炎症を鎮めようと努めるわけですね。そのためによく使われる薬剤としてステロイドが挙げられますが、これは副作用が大きいという欠点もあります。

私たちのこれまでの実験では、レアアースの薬剤が、腎臓の炎症を抑える効果も認められました。これによって、組織の損傷による繊維化を抑制していくこともできるはずです。

西村:効果が持続的であるということは、慢性疾患に対する利点もあるのではないかと思いました。レアアースの抗酸化作用でこそアタックしていけるような領域はあるのでしょうか。

川口:おっしゃるとおり、私たちの薬剤は慢性疾患にも非常に有効だと思います。1回で反応が終わってしまう薬であれば、継続してどんどん投与していく必要があります。要するに、患者さんはずっとお薬を飲み続けなければいけないということですね。その点では、腎不全などの慢性疾患に対しても、私たちが開発している薬剤は比較的向いていると思います。ある程度臓器に曝露して、しかも曝露している間は効果が持続する、いわゆる触媒効果が絶えず起こっている。薬を毎日飲み続けなくてもいいというのは、ほかの材料に比べて非常に大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。

西村:慢性疾患の患者さんには、「薬を飲み続けなければいけない、でも飲み続けて本当にいいんだろうか」という不安を持つ人も多いと思います。そうした副作用についての心配が減りそうなのも朗報ですね。数十年先の未来では、貴社が開発した仕組みを使った無機材の薬が、日常の中で気軽に手にするものになる。そんな可能性はありそうでしょうか?

川口:そうなっていたらすばらしいなと思います。例えばいわゆる膠原病(こうげんびょう)などでは、かなり慎重な投薬と服薬が求められていますよね。今はステロイドが用いられることが多く、副作用にも気を配る必要があります。私たちの技術で、そうした疾患を持つ患者さんも気軽に飲めるような薬がつくれていたら、それはとても嬉しいことですね。

幅広い臓器と疾患にアプローチし、検証と結果を重ねていく

西村:事業を進めるにあたって、何か課題に感じていることがあれば教えてください。

川口:私が当初不安を抱いていたのは、GMP(Good Manufacturing Practice=医薬品製造において求められる適正製造規範)の問題でした。有機だから無機だからということ以前に、薬をどこでつくってもらえるのかということですね。この課題を解決するのは、創薬研究で起業する多くの会社にとって難しいことだと思います。

ただ、この点で私たちは本当に恵まれていて、すでに、ある非鉄金属の企業にご協力いただけるようになっています。製造についても同社で担っていただくことができ、すでにつくり手も確保できている状態です。課題に感じていたことを乗り越えてみたら、それが非常に大きな強みになったといえます。

西村:なるほど。レアアースと聞くと、一般の人はその供給方法も気になるところだと思います。この供給については一定のルートを得ているということでしょうか?

川口:はい。供給ルートについては確保することができています。また、直近の動きですと、内閣府直属の組織であるSIPが南鳥島のレアアース泥の開発に取りかかっています。少し横道にそれますが、レアアースの掘削には大きな費用がかかり、揚泥(ようでい)に含まれる物質によっても採算性が変わってくるものです。その点、私たちが創薬に活用しようとしているレアアースは比較的安価なものなので、掘削作業全体の採算性を高めることにも寄与できているかなと。コストパフォーマンスも上げながら、東京都で採れたレアアースを高度化して、世界に売り出していく。そんなことも、現実的な夢として目指していけたらいいなと思います。

西村:いわばハード面の課題をうかがいましたが、ソフト面といえる課題はありますか?

川口:透析や腎臓内科などを専門とするアカデミアの先生方ともコミュニケーションを深めて、コンセンサスを得ていくことも大切だと思っています。また、バイオベンチャーとして、今後はとくにグローバルの製薬会社とも協働し、理解を得ながら進めていくことが必要でしょう。そうしたパートナーをいかに見つけるかということも、弊社の重要なミッションの一つです。新薬の実用化に向けては、資金と人材と、それに伴う結果が必要です。この辺りもつねに向き合っていくべき課題だと感じています。

まずは世界中の腎臓をターゲットに、幅広い疾患にアプローチ

西村:海外展開も考えていらっしゃるのですね。

川口:もちろん視野に入っています。まず腎臓を狙っていくわけですから、これは世界中の方がターゲットになると思っています。最近はアメリカに対しての有力なデータを得るため、オーストラリアで臨床開発をする例も増えていますが、当然そういったことも考えています。また、グローバルの製薬会社にアピールするためには、英語論文の積み重ねも大切です。2026年3月には世界腎臓学会が日本で開催されることになっており、腎臓内科の先生方も盛り上がっているところですが、私たちもこの学会に論文を提出しました。VCをはじめステークホルダーの方々とも相談しながら、さらなる海外戦略を練っていければと思っています。

西村:ここまでお話をうかがってきて、抗酸化作用という一つのはたらきによって、あらゆる臓器に対しての治療方法をつくれる可能性があるのだと感じました。今後の展開としては、どんな戦略を描いていますか。

川口:活性酸素の機序は非常に多岐に渡っています。現在の臨床の結果を踏まえても、さらなる適用拡大が十分に見込めるというのが、弊社の今後の強みだと思います。特定の疾患をターゲットにすることもできますが、同じ方法を使って別の臓器を治療できる可能性も非常に高いのです。腎臓で炎症を抑える例を挙げましたが、肺の間質に炎症が起きている場合にも、レアアースが曝露することによって炎症を抑制することができます。脳もしかり、目もしかり、肝臓も……。おそらくすべての臓器に適用できるでしょう。さまざまな疾患に対してアプローチし、検証しながら確実な結果を重ねていきたいと考えています。

UntroDコメント
1,000万人を救う事業を、ユニークな手法で実現

川口さんは、医療関係者でも薬学関係者でもないにも関わらず、自身の研究成果を医療の道で役立てたいという熱意を持って、多くの研究機関の門を叩いてきました。その行動力は経営者として大切なもので、きっと最後までやり抜いてくれると信じています。
また、腎臓疾患を抱えている患者さんは国内で1,000万人に上るとされています。とても難しいチャレンジングな分野ではありますが、これだけの人に関わる疾病に向き合うことは、非常に大きな社会的意義があると思います。しかも、その手法が無機化合物であるというユニークさも、同社を語る上で欠かせないポイントです。活性酸素は医療・医薬の現場でも注目されていますが、ここに着目し、疾患の根本的な原因にアプローチするというのがすばらしい。経営者として信頼に足るパーソナリティと社会的意義の大きさ、そして事業のユニークさ。この3点に、同社の魅力が詰まっていると思います。
(UntroD Capital Japan株式会社 グロースマネージャー 三井 善夫)

聞き手

西村勇哉
NPO法人ミラツク代表理事、株式会社エッセンス 代表取締役 国立研究開発法人理化学研究所未来戦略室 イノベーションデザイナー、大阪大学社会ソリューションイニシアティブ 特任准教授。2011年のミラツク設立以降、大手企業の事業創出に未来構想の設計、独自メディア運営など、アカデミックな視点と圧倒的な行動力でプロジェクトの社会実装を牽引している。

Tokyo Office

〒105-0001
東京都港区虎ノ門2-2-1
住友不動産虎ノ門タワー 17F

contact@untrod.inc

Singapore Office

71 Ayer Rajah Crescent, #06-11/12, Singapore 139951

Malaysia Office

G-A, Block 2330 Century Square, Jalan Usahawan,
Off Persiaran Multimedia, 63000 Cyberjaya, Selangor

contact_global@untrod.inc

プライバシーポリシー ハラスメントポリシー