Top Our Solutions Our Impact Our Portfolio About Us News Recruit Contact
Top Our Solutions Our Impact Our Portfolio About Us News Recruit Contact
  • Top
  • News
  • 海中を探る自律型小型モビリティで、海を見える化し環境問題を解き明かす、 Honda発のスタートアップ「UMIAILE」
2026年2月06日

海中を探る自律型小型モビリティで、海を見える化し環境問題を解き明かす、 Honda発のスタートアップ「UMIAILE」

「地球の7割を占める海にこそ、未曾有の地球環境問題を解き明かすヒントがあるかもしれない」。Honda発のスタートアップ「 UMIAILE(ウミエル)」は、人工衛星では届かないとされる海中を探る自律型小型モビリティを開発し、宇宙と海中の中継役になろうとしています。代表の板井亮佑さんにお話を聞くなかで一貫していたのは、難条件だからこそ一層技術を磨こうとする覚悟。そして、国のインフラとして、迫りくる災害に備える決意でした。


株式会社UMIAILE(ウミエル)
2025年1月設立。本田技研工業株式会社(Honda)の新規事業創出プログラム・IGNITIONから生まれたスタートアップ企業。独自の船体姿勢制御技術により、小型ながら高速で水上航行可能なUMIAILE ASVを開発している。創業メンバー3名は全員、株式会社本田技術研究所出身。代表取締役は板井亮佑氏。

板井氏は中央、向かって左側が中島氏、右側が海野氏
自律する小型無人ボートで、未解明な海を見える化する

板井亮佑(以下、板井):私たち「UMIAILE」は、Honda発のスタートアップとして、2025年の1月に創業しました。小型の無人ボート「ASV(Autonomous Surface Vehicle / 自律無人ボート)」を大量に使うことで、海洋観測を効率化することを目指しています。社名の由来にもなりますが、『海を見える化』するための、『海の人工衛星』をつくろうとしています。

UMIAILE(ウミエル)が開発した自律無人ボート

西村勇也(以下、西村):小型の無人ボートを製造販売するのではなく、ボートの航行により得たデータを用いての事業展開を考えていると推測します。対民間企業であれば、漁業や発電に関するモニタリングや、気候変動に伴う海洋監視が考えられそうです。対象を広げれば、各国間の対立が起きた際に必要な情報を得られそうですが、実際のところはいかがでしょうか。

板井:前提はご認識の通りです。私たちがつくっているのはASVそのもので、積載するセンサーや観測機器類ではありません。つまり、できるだけ汎用的にASVのハードウェアを設計・製造し、ニーズに合わせて積載物が変わるイメージです。そうすることで、様々なユースケースに対応できると考えています。ユースケースとしては、最近では2つのテーマに注力しています。1つは地震防災のための海底地殻変動観測で、2つ目が安全保障です。

西村:顧客の領域は国や行政と、ある種お堅い相手となりますが、なぜB to Gを選ばれたのですか。

板井:意識してこのテーマ、この顧客領域を選びました。最初にHondaで提案をした際には水産業向けのサービスをイメージしていたのですが、仮説検証をしていくなかで、最初にこの領域に取り組むことの難しさが見えてきたのです。というのも、社会実装をするには莫大な資金が必要になるうえ、無人ボートに対する法律は未整備なため、得策ではないと考えたわけです。そこで、国土交通省や海上保安庁といったルールメイクの主体者になり得る方々と、ルールメイクに関する議論を始める段階から一緒に取り組んでいきたいと考えたのです。

西村:なるほど、興味深いですね。

南海トラフ巨大地震に備えるための、海底地殻変動観測

西村:まず防災をテーマにした理由からお聞かせください。

板井:海底地殻変動観測については、今始めなければ間に合わないという危機感からです。南海トラフ巨大地震は今日起きてもおかしくありません。このテーマに関しては、一刻も早く進めなければという気持ちです。

西村:素人考えでは、地震や安全保障というテーマとなると精度の高さ、確実さが求められるでしょうから、スタートアップでは大変な部分も多いと想像します。だからこそ、確固たる意志を持って選ばれたのだろうと思ってお聞きしました。海上でデータを取得するということですが、それは人工衛星では得られないデータなのか、海上の方がより優位なのか。この点はいかがでしょうか。

板井:私たちが目指しているのは『海の人工衛星』だとお話しましたが、海上にある人工衛星と宇宙空間にある人工衛星では、それぞれに得手、不得手があると考えています。例えば、海中を観測しようとしても、空中の衛星からでは取得できない情報は多いです。海の表面は見られても海中は難しいので、海中データが必要となると、海中に潜っていくロボットや潜水型の調査船を使います。また、水は電波を通さないので、宇宙の人工衛星と海中のモビリティやロボットをつなぐこともできない。それぞれの衛星・モビリティやロボットの技術が発達していくにせよ、海域表面には必ず、中継役が必要になるわけです。なので、ASVから始めようと考えています。

人工衛星と海中の中継役を目指す

西村:宇宙と海中の中継役なのですね。ちなみに、海底地殻変動観測でいうとどのようなデータを取得するのですか。

板井:年間数センチメートル単位で動いている、海底のプレートの動きです。この移動具合を、例えば地震発生のメカニズムの解明につなげるためのデータとして使いたいので、海底プレートの動きを精密に観測することが、ミッションになります。

これまで活用されてきたブイでは困難な、一定範囲内に留まり続けることが価値

西村:素朴な質問ですが、海上で常時同じ場所に浮かばせておくというのは、流れもあるでしょうし、非常に難しいイメージがあります。どんな解決策がありますか。

板井:これに関しては、正確な位置を出し、そこに留まり続けるという2つのステップがあると考えています。正確な位置を出すという意味では、GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)があります。日本周辺には「みちびき」という準天頂衛星システムがあり、高精度に位置を知る技術自体は確立されているのです。一方、留まり続けるという点で最初に思いつくのはブイですが、ブイを係留できる場所は限られていて、なにより係留するとそこから動けないという欠点があります。自分に動力があり、行きたいときに行きたいところへ行けるという点で、私たちの価値を出したいところです。

西村:少しずつ動いて修正するようなイメージでしょうか。

板井:その通りです。GNSSの座標をキープするように、例えば潮の流れに対して逆に駆動するということです。実際には、厳密にピンポイントに留まり続けて欲しいというユースケースは少なく、ある座標を中心に許容できる範囲を描いて、その中に留まり続けるようなオペレーションになることが多いです。

プロダクトの特徴は、限られたエネルギーで遠くまで速く進むこと

西村:実際に運用されている様子をイメージしたいのですが、ずっと走り続けているのでしょうか。

板井:そうです。私たちのプロダクトの最大の特徴は、水中翼(すいちゅうよく)の技術を使って船体を浮かせて進むことにあります。船体が水から受ける抵抗を減らすことができるため、太陽光のような限られたエネルギーでも、海上でより遠く、より速く進める点が強みです。今取り組んでいるのは、観測ポイントまでは抵抗を受けずになるべく速く進み、ポイントに到着したら着水して、そこでしっかり観測をして、ミッションが終わればまた次の地点に向けて効率よく進んでいく。そんな、オペレーションを分けた最適な方法の確立です。

西村:一般的な船ではできないことなのですか。

板井:観測自体はこれまでも船でやっていることです。今挑戦しているユースケースは、有人船でやってきたことを無人船に置き換えられないかという検討です。というのは、有人船は造船だけで何百億という資金が必要で、動かす段階では、燃料費や人件費が必要になります。そのような課題から、そもそも観測できる船も足りていません。海を見える化するためには高頻度かつ高密度な観測が不可欠ですが、これは有人船前提の制約が支配的であると認識しています。だからこそ、有人船だけに頼らず無人機を活用することで、観測頻度と密度の課題に対してブレイクスルーできるのではないかと考えています。

西村:無人の小型機の利点について理解しました。UMIAILE社が手がけるのは、水中翼を持つ小型ボートですが、翼がないヨット型のようなボートと比べると、どういった優位性があるのでしょう。

板井:船体上部に帆がついたASVは、海外市場ではいくつも提案・実用化されています。ただ、日本周辺の海洋環境が非常に厳しいことと法律の問題で、日本においては難しさもあります。海洋環境については、潮の流れが速く多くの台風が通過するなど、世界でも有数の厳しい海洋条件が凝縮しています。具体的には、潮の流れに押し流されて行きたいポイントに辿り着けなかったり、帆が壊れて使い物にならなくなったりという声を聞いています。ただこの環境の厳しさは、日本から始める意義でもあります。日本近海で通用する無人小型機を開発できれば、海外展開することは比較的容易なはずだと思うのです。

西村:今のお話だけでも、国土が狭い日本だからこそ、車なら小型車が発展したように、海にも日本ならではの環境があると分かります。日本での開発を考えると、日本の特殊性に対応する必要がある。日本ほどの技術力はないけれど、環境の厳しさは同じという国も少なくないと思うので、日本初で展開できる可能性が大きいわけですね。

板井:はい。今お話くださった小型車の例が、非常に近い構図だと思います。日本の軽自動車や原付バイクは、ガラパゴス的な日本の法律に適合させるために、非常にチャレンジングな開発を行う必要に迫られ、結果的に世界市場で高い評価を受けていると認識していますが、今まさに自分たちも同じような挑戦の中にいると思います。当然ながら、少ない出力でスピードを出したり小さいサイズの船で効率的に走ったりすることは、技術的に難しいので、あえてそこに今取り組んで技術の確立を目指しています。

西村:日本周辺の海洋環境が厳しいからこその技術革新について、よく分かりました。

新しいこと、技術的な挑戦を応援するHondaの風土に助けられた

西村:お話をお聞きして思うのは、改めてHondaらしい取り組みですね。Hondaという大企業に、ただ単に資本投資されているということではなく、Hondaで実践されてきたことが活きているスタートアップだと思いました。実際のところはいかがですか。

板井:そうですね。私を含めて共同創業した3人は全員Honda出身ですが、Hondaを出た今だからこそ改めて思うことは、いくつもあります。中でも、個人がボトムアップで取り組みたいと言ったことに対して応援する文化を、心底すごいと思っています。UMIAILEも、最初はHondaの新規事業創出プログラムに応募したことが始まりで、本当に多くの支援をもらいながらここまで成長してきましたから。

西村:そうでしたか。さらには、技術的な挑戦に対するポシティブな姿勢もあるように思います。お話を聞いていて、ただ売れればいいのではなく、そこに技術の挑戦があり、実現してこそ新しいものが生まれると考える風土があるように感じました。技術的なハードルはむしろ超えていくべきものだ、という考えがあるのでしょうか。

板井:はい、あると思います。Hondaは本体と研究所が切り離されていて、本体は市場やビジネス面での厳しい視点をもっており、研究所は技術シーズ発で技術をつくっています。それぞれに独自の狙いがあり、マッチするものを商品にしていく。これは自動車メーカーの中でも特殊なやり方だと思います。私はHondaでは研究所にいましたが、実際に非常に自由に技術的なチャレンジをしてきました。今回のUMIAILEにつながる、水中翼船の姿勢制御の技術も、何かビジネスをやろうとか社会課題を解決しようという考えが発端ではなく、単に技術的な興味からだったのです。「こうすれば本来不安定なものを、安定的に効率よく走らせることができるのではないか」というところから始まっているのは、ビジネス視点からすれば「社会的なニーズは?」と問い詰めたいところかもしれません。けれど、ビジネスを切り離したチャレンジができることは、Hondaの土壌であるような気がします。

西村:よく理解できます。まず一歩目として、防災と海上の安全保障に取り組むということをお聞かせいただきましたが、最終的にどのような領域に到達したいか、もしくはUMIAILEがあることで海洋にどのような状況を起こしたいか。これからについてお聞きしたいです。

板井:順番として、B to Gから始めますが、その先には、海上に当たり前に無人のプラットフォームがある世界をつくりたいと考えています。この世界が実現できれば、最初にイメージしていた水産業の役にも立てるはずで、もっとB to Bの領域を広げていけると見ています。その上で、将来目指しているのはやはり『海の人工衛星』です。海に無数に浮かぶ無人のプラットフォーム同士が連携して、取得したデータを必要な方に必要な情報としてお渡しするような、そういうインフラになっていきたいのです。そこで肝になるのは、どれだけ多くのインフラとしてのプラットフォームを展開できるか、一つの機体がどれだけ複数の顧客に価値を提供できるかであるため、人工衛星という呼び方にしているのです。

一つの機体で複数の価値提供を目指す
効率的な大量生産で、『海の人工衛星』を目指す

西村:海に無数に浮かぶ無人のプラットフォームというのは、どれくらいの密度になるイメージでしょうか。

板井:量のイメージでは、数千というレベルではなく、数十万という規模です。世界中の7割を覆うこの海を網羅しようとすると、自ずとこのくらいの規模になります。

西村:海のスターリンク(スペースX社が提供する、多数の衛星を利用した衛星インターネットサービス)のようなイメージですね。そうなると、相当な大量生産が必要になりますから、いかに定型化してバージョンを少なくして、低コストで生産するかが重要になりそうです。これもまた、バイク産業のようです。

板井:まさにその考え方です。効率的な大量生産にはこだわっていきたいと思います。奇しくも、最初期の頃に仲間内では、海のスーパーカブという意味で「海カブ」とも呼んでいました。スーパーカブは、Honda創業者の本田宗一郎がつくり、今や当たり前に、新興国から先進国まで含めて、世界中で走っています。スーパーカブはその性能と頑丈さを安価に提供することで、世界中の人々の生活や仕事の役に立っています。私もその価値を「海カブ」で実現したいのです。

西村:大量生産に向けてのスケジュールは見えていますか。

板井:大量生産に向けての課題も明確にあるので、直近で取り組み始めているところです。これまでは原理証明という意味で、まず1機をつくってプロトタイピングをしていたわけですが、ある程度の見通しが立ってきたタイミングでは、いかに効率的に量産できるかにシフトしていく必要があります。一つのマイルストーンとして、この1年間で、量産・汎用のモデルの生産に向けて、必要スペックの見極めやコスト・リードタイム等の成立性について検討を進めていく考えです。

地球規模の社会課題を解決するヒントは、未解明の海の中にある

西村:最後の質問の前に改めて、高度0 mの人工衛星とは、すごく秀逸なコンセプトですね。小型船をつくるという意味合いでは、海中ドローンは他社の商品が既にありますし、他との差異は何かと考えると思うのです。でも「人工衛星的に海を見える化したい」ということは、全く違う価値で勝負するお話だと受け取りました。もちろん技術的な難しさは相当あるのだろうと想像しますが、興味関心を持って期待したいです。日本は海に囲まれた島国だからこその恵みと困難を受けてきた国ですが、海洋国家としての新たな価値が出てくるでしょうし、島々の国家も顧客になりそうですね。今までは大陸中心だった社会が、海洋中心の社会へとバランスしていくことができるのでしょうか。壮大な夢に、興奮を覚えます。だからこそぜひ最後に、UMIAILEの壮大な夢をお聞かせください。

板井:「海の見える化をしたい」ということはあくまでも手段であり、その先に何を目指すかだと思っています。それはやはり、100年後の地球です。実際、気候変動や食料問題、紛争も絶えず起こっており、課題だらけです。自分たちの子どもや孫の世代の地球がどうなっているかは想像もできませんが、不安だけはある。そう考えた時に、地球規模の社会課題を解決するヒントは、未解明の海の中にあるのではないかと思うのです。海を見える化してヒントを探すことこそが、UMIAILEの存在意義だと信じています。

その中でも、みなさんにまずイメージしてほしいのが気候変動へのインパクトです。海は気候変動の影響が早く表れやすい場所でもあり、同時に、まだ観測されていない “空白”が大きい。だからこそ私たちは、ASVという汎用的なプラットフォームに、目的に応じてセンサーや観測機器を積み替えられる形で、海のデータを高頻度・高密度に集められる世界をつくりたいと思っています。例えば、海底に生える海藻や海草の分布や量を正確に観測できれば、ブルーカーボンの定量化などを通じて地球温暖化解決の糸口にもなり得る。そうした“海のデータが増えること”自体が、気候変動に対する社会の意思決定を前に進める力になると信じています。

UntroDコメント
UMIEILEは最高のチーム。そこに最大の魅力がある

独自の技術への評価は言うまでもありませんが、我々が最も惹かれたのはその「チーム力」です。スタートアップ企業にこれから待ち受ける困難を考えると、内発的動機が非常に重要になりますが、代表の板井亮佑さんからは、その熱源となる強烈な意志を感じました。さらには、共同創業者である海野暁央さん・中島亮平さんも、決してフォロワーではなく「今、チームのために私はこの役割であるべきだ」という経営者視座を持って動いています。この「自律した3人のバランス」こそが、究極の夢を実現させる原動力になると確信しました。
また、「海の人工衛星」という言葉。これがまた非常に素晴らしく、まさにUMIAILEの提供価値を一言で言い表しており、この言葉の元に人が集い、技術が世の中に社会実装されていく広がっていくイメージが湧きました。
(UntroD Capital Japan株式会社 グロースマネージャー ​木下 太郎)


聞き手

西村勇哉
NPO法人ミラツク代表理事、株式会社エッセンス 代表取締役 国立研究開発法人理化学研究所未来戦略室 イノベーションデザイナー、大阪大学社会ソリューションイニシアティブ 特任准教授。2011年のミラツク設立以降、大手企業の事業創出に未来構想の設計、独自メディア運営など、アカデミックな視点と圧倒的な行動力でプロジェクトの社会実装を牽引している。

Tokyo Office

〒105-0001
東京都港区虎ノ門2-2-1
住友不動産虎ノ門タワー 17F

contact@untrod.inc

Singapore Office

71 Ayer Rajah Crescent, #06-11/12, Singapore 139951

Malaysia Office

G-A, Block 2330 Century Square, Jalan Usahawan,
Off Persiaran Multimedia, 63000 Cyberjaya, Selangor

contact_global@untrod.inc

プライバシーポリシー ハラスメントポリシー