世界で戦えるディープテックスタートアップを日本から生み出す
メンバーインタビュー: 平泉裕美 / リアルテックホールディングス
平泉 裕美グロースマネージャー2023年リアルテックホールディングスにグロースマネージャーとして参画。投資実行から投資後の事業支援、出口戦略の立案まで幅広く担当。リアルテック参画以前は、日本生命保険相互会社にて、アセットマネジメント事業の戦略立案、海外資産運用会社への買収と投資後の協業推進に携わった後、米国現地法人にてPE及びVCのFoF投資に従事。早稲田大学国際教養学部卒。
インパクトを最優先してスタートアップと伴走する姿に共感
――まずは、リアルテックに入社した経緯を教えて下さい。
前職では生命保険会社の米国現地法人に勤務していまして、北米のファンドへの投資業務をしていたのですが、そこでスタートアップ投資やディープテックへの興味が高まってきていた矢先に、ご縁のあったリアルテックメンバーの方からお声掛け頂きました。
――ディープテック領域のスタートアップ投資と言う意味では様々な選択肢があったと思いますが、なぜリアルテックを選んだのでしょうか。
まずリアルテックのメンバーたちの多様性と人間的な魅力ですね。入社前の段階で何人かのメンバーと話したのですが、投資先スタートアップに対しても自社に対しても並々ならぬ情熱があり驚きました。絶対にやり遂げるという覚悟と、投資先スタートアップに対する暖かな愛情を感じますし、財務や数字を追いかけるだけでない人間味を強く感じます。これまでも投資業務はやってきたのですが、どうしても投資先スタートアップとの人同士の密な関わりや、一緒に社会課題の解決を目指そうというような一体感は無かったので、とてもやり甲斐を感じています。
それは多分、リアルテックが経済的なリターン以上に、まず第一に社会的なリターン、インパクトを目指しているからだと思いますし、キャピタリストであるグロースマネージャーの多くが研究者出身だったり、出身業界もITスタートアップやIT大企業など非ディープテックだったり、家電業界やデザイン業界だったり、かなり多様性が高いですね。稀有なVCファンドだと思います。
それと実績を詳しくお聞きする中で、長年ディープテックスタートアップへの投資支援をハンズオンで実践してきたリアルテックの実力は本物だと感じました。数字に現れない部分で、投資先スタートアップとLP(有限責任組合員)である事業会社との連携事例も多数プロデュースしていますし、研究開発にも事業開発にも長い時間を要するディープテックスタートアップを、よくここまで社会実装に近づけたなと思いました。もちろんスタートアップ自身の努力あってのことですが、「スタートアップとVCが一緒に伴走している」ことが伝わって、とても共感できましたし、こんな風に働きたいなと思いました。
世界で勝てる日本初のティープテックスタートアップを育てたい
――グロースマネージャーということはスタートアップへの投資と支援が仕事になるかと思いますが、平泉さんのミッションはなんでしょうか。
「グローバルで通用する日本発の企業を育てる」ことです。バブル崩壊後の日本で育ってきた中で、経済成長率が下がったとか、もう日本はダメだという話を聞き飽きていたのですが、アメリカで働いて確信したことは、やっぱり日本はディープテックが強い、ディープテックなら勝てるということ。そして何よりも日本が大好きだし、日本を盛り上げたいという気持ちが強まりました。先ほどのリアルテックを選んだ理由とも繋がりますが、ディープテック領域なら日本は海外でも戦えるし、それを応援することが日本を盛り上げることに繋がるという確信があります。それが日本に帰ってきた理由でもあり、リアルテックに入った理由でもあります。
世界中から認知され、世界のディープイシュー(深刻な課題)を解決できるような日本発のディープテックスタートアップを支援して育てる。育てるというのはおこがましいかもしれませんが、私が得てきた知見や専門性を活かして貢献できることはあると思います。
――平泉さんのミッションはリアルテックのミッションそのものでもありますね。知見や専門性としては、海外勤務経験、投資や事業戦略支援などでしょうか。
私は元々、機関投資家出身ということもあり、一緒に日本のディープテック業界を盛り上げるべく投資家を口説き、仲間を増やすことを大切にしています。
スタートアップと事業会社、機関投資家がWin-Winの関係を築けることが、健康的なエコシステムだと考えており、ファンドとしてきちんとしたリターンをお返しすることは勿論、最先端の技術の情報提供や協業に向けたマッチング、未来に向けたアイディア創出など、やれることは沢山あると思っています。
また、米国に住んでいたこともあり、投資先の企業にはDay1からグローバルを意識することも大切にしています。それは、海外事業展開を見据えた事業戦略と人脈づくりを意識すると同時に、グローバルで見たときの自身の立ち位置をきちんと理解することも大事だと思っています。
――メンタル面も含めて、それ以外で自覚しているご自身の強みなどありますか。
面接みたいですね(笑)。人と人を繋げるのが好きだし得意なので、投資先スタートアップとLPの連携には力を発揮できると思いますし、それ以外にもイベントで共創の場を作ったり、それぞれのニーズや価値、人同士を繋げる橋渡しをしていきたいですね。
メンタル面で言うと、自分で言うのもなんですが、諦めの悪さというか、決めたことは絶対にやり切るような強さはあると思います。学生時代に水泳に熱中していたのですが、それを周りの意見であっさり辞めてしまって後悔した経験がありまして。失敗とか挫折を人のせいにしてしまうと結局何も解決しないし、自分自身が一番苦しむんだと痛感しました。それから絶対に自分自身で決めること、決めたことはやり通すこと、人のせいにしないことを誓いました。むしろ成功するまでトライし続ける感じで、失敗は失敗として受け入れつつも、失敗を糧にして前に進むことを腹に決めています。
「価値があるのにもったいない」が原点
――後悔を後悔のまま終わらせないで、自分自身を変えていったのですね。ところで、これまでの人生経験で、リアルテックでの仕事に繋がる出来事やエピソードがあれば教えて下さい。
うちは両親や親戚がみんな医者や医療関係者なのですが、それもあってか、幼い頃から何となく自分も医者になるのかなと感じていて、高校時代には理系で大学受験をしようと思って勉強していました。でも大学受験を通して、自分は化学や物理などの科学ど真ん中よりも数学や計算が得意なことに気づきました。
そして数字への強さを活かした分野として、金融、経済、経営に興味が傾いていって、大学からは思い切ってそちらに方向転換しました。大学時代にアメリカに留学してシカゴのインキュベーション施設でインターンをしていた時期があったのですが、そこで初めてスタートアップ経営者たちの情熱やアントレプレナーシップに触れました。その時の経験も今に繋がっているし、キャリアの原点になった気がします。
その後、生命保険会社で金融メインの仕事をしていたのですが、2019年にアメリカに赴任してから、ヘルスケア分野のスタートアップがどのように生まれているのか、医療のエコシステムがどうなっているのか、といったリサーチ活動をする中で、過去に置いてきたはずの医療やヘルスケア、ライフサイエンスの分野に再び興味を持ち始めました。
実は心のどこかでずっと医療やテクノロジー領域に関わりたい気持ちがあったのですが、きっかけが掴めないまま投資家としてのキャリアを積んでいました。リアルテックにお声掛け頂いた時に、専門領域としての金融や投資、関心対象としてのスタートアップや医療という、得意と興味がピッタリ合致した気がして、リアルテックへの入社を後押ししてくれた気がします。
――医療系スタートアップで働くことは考えなかったですか。
確かに興味はありますが、スタートアップの中に入るというより、業界全体を広い視野で見られる投資家として関わる方が自分には向いていると思いました。また、エコシステムや仕組みをどう変えられるか、という事に特に興味がありまして、入社前にリアルテックと対話する中で、スタートアップと大企業の連携をグローバルに取り組んでいることを知って、益々リアルテックで働く意欲が高まりました。
――先ほど医療に関わりたい気持ちがあったと仰いましたが、なぜでしょうか。
身近で病院というものを見てきて、資産運用を含めた業界の仕組みについて色々と課題を感じる一方で、改善できる余地や可能性も感じていました。
大学にも同じ課題と可能性があると思っていて、優秀な人材を育てたり、新しい技術を生み出したりする重要な役割を担っている一方で、それをどう社会に役立てていくか、企業やビジネスに接続していくか、というエコシステム構築の視点が少ないことが、本当にもったいないと感じていました。
もちろんそこまで感じるようになったのは金融の仕事をするようになってからですが、高校時代にも漠然と感じる「もったいなさ」の感覚がありました。周りの人たちが医者を目指すことが当たり前だった中で、私はどうしてもそれに違和感があって、その先にもっと別の選択肢があっても良いのではと。
――リアルテックの投資先スタートアップでも「もったいない」という想いで起業した方は多いですね。特に医療系スタートアップは、せっかく人の命を救えるような知識や技術があるのに、それが社会や人の役に立てることができない歯痒さや悔しさがある。そうした切実な課題意識が企業の原動力になっているのでしょうね。
はい、私の場合はそうした「せっかく価値があるのにもったいない」という想いが全ての原点という気がしますし、金融や経営を学んだり、アメリカに行ったり、ディープテックスタートアップ投資の世界に飛び込む原動力にもなっている気がします。
ディープテックスタートアップ人材の流動性を高めたい
アメリカで経験したことで言うと、大学のヘッドに金融系やアントレプレナー出身の人が多かったりと多様性があります。日本では医療系出身者はずっと医療系というのが常識的だと思いますし、医療系に限らず、分野同士の壁が高いというか、人材の流動性がものすごく低い印象です。
特にディープテックの場合は、初期の開発などは同じ研究室や同じ業界の人たちで一気に推し進める必要があると思いますし、だからこそ濃い関係性を築けたりもするんだと思います。でも事業フェーズが変わって他分野から人を招いた時に、閉鎖的に感じたり、疎外感を感じたり、世界観のギャップみたいなものが弊害になったりと、目に見えない問題がありそうですね。
――確かに一部のディープテックスタートアップでは見えない壁のようなものは感じることがありますね。ただ最近はそうした壁もかなり取り払われてきている印象です。
リアルテックに入って投資先スタートアップに関わり始めていますが、想像していたよりもオープンな雰囲気の組織が多いですね。グロースマネージャーの先輩方の支援による効果も大きいと思いますが、SaaS系スタートアップなどに比べるとまだまだ出身業界や世代の多様性は低いと思いますので、ディープテックスタートアップの人材の流動性を高めていくような支援をしていきたいです。
――投資先の組織開発を支援するチームディベロッパーとの連携も重要になりますね。それも含めて、リアルテックの仲間たちと今後どのように協働していきたいですか。
リアルテックの人間味と情熱のある仲間たちと一緒なら、きっと人と人の繋がり、情熱と情熱の組み合わせで素晴らしい連携が生み出せるんじゃないかと感じています。投資先スタートアップとLPの連携、投資先スタートアップ同士の連携、様々なステークホルダーとの連携を支援していきたいと思います。
そしてリアルテックにはグローバルな人材も多く、リアルテックホールディングスの100%シンガポール子会社であるRTHD Singaporeからはアジアとヨーロッパを結ぶ世界初のディープテック特化型VCファンドの設立を発表するなど、グローバルに向けた展開に大きく舵を切っています。世界で戦えるディープテックスタートアップを日本から生み出すために我々にできることは何なのか、仲間たちと一緒に考えながら、大胆に行動していきたいと思います。
――ありがとうございます。最後に、リアルテックやディープテックスタートアップに関心のある方、働きたい方に向けてメッセージを頂けますか。
入社前の面談では、「リアルテックはとにかくハンズオンのVCだ」と伝えられましたが、ディープテックの領域は特に、目に見えないアイディアの状態から価値を見出し、プロダクトが出るまで根気強く伴走しなければなりません。が、それゆえに社会に与えるインパクトも大きく、やりがいのある領域だと思っています。
また、ディープテックといっても宇宙から素材、エネルギー、バイオ、医療など、非常に領域が広いが故に、様々なバックグラウンドの人が集まっており、今どのような業界にいる方でも、このディープテックスタートアップ業界が「関係ない」という人はいないと思っています。もし、同じような志を持つ方がいらっしゃったら、一緒に働けることを楽しみにしております。