Top Our Solutions Our Impact Our Portfolio About Us News Recruit Contact
Top Our Solutions Our Impact Our Portfolio About Us News Recruit Contact
  • Top
  • News
  • 薬のない病気をゼロに、日本発のモダリティで世界を塗り替える FuturedMeが挑む、創薬不可能(アンドラッカブル)なき未来
2026年5月11日

薬のない病気をゼロに、日本発のモダリティで世界を塗り替える FuturedMeが挑む、創薬不可能(アンドラッカブル)なき未来

「No patients without medicine」――。この言葉を掲げ、既存の創薬技術では手が届かなかった領域に挑むスタートアップがある。FuturedMe株式会社だ。代表の宮本悦子さんが発明した独自のタンパク質分解誘導技術「CANDDY(キャンディ)」は、これまでの創薬や薬のあり方を根底から覆す可能性を秘めている。日本発のこの技術がなぜ生まれたのか。誰もが公平で質の高い医療を受ける権利を実現するための真摯な姿が見えてくる。

株式会社FuturedMe(フューチャードミー)
2018年6月設立。東京理科大学での研究成果を基に誕生した、日本発のディープテック・スタートアップ。独自の標的タンパク質分解技術「CANDDY®(キャンディ)」をコアとし、従来は薬にすることが困難(アンドラッガブル)とされた疾患標的に対する革新的な新薬開発を推進している。代表取締役は、同技術の発明者である宮本悦子さん。
社名に込められた「一人ひとりのための未来の薬」
創薬の歴史を阻んできた「25%の壁」

宮本悦子(以下、宮本): 私たちのビジョンは、社名そのものに集約されています。「Future(未来)」と「d(Drug/薬)」、そして「Me(一人ひとりに)」。つまり、患者さん一人ひとりに、確実に薬が存在する時代を創ることです。

西村勇也(以下、西村):非常に力強いメッセージですね。なぜそのようなビジョンを掲げられたのか、その背景をおしえてください。

宮本:現代の医療は、解析技術が飛躍的に進歩しました。そのおかげで「何が病気の原因か」を特定できるようになりました。しかし、自分の病気の正体はわかっているのに、それを治療する「薬がない」ため、諦めざるを得ない患者さんが大勢いるのです。この矛盾こそが、現在の医療における最大の絶望です。そのため、わたしたちは、”No patients without medicine”(薬がないために治療を諦める人をゼロにする)をミッションに掲げ、この絶望を技術で解決しようとしています。

西村:ミッションを実現するための核心となるのが「CANDDY」という技術ですね。化学はあまり詳しくないのですが、現在の主な薬は阻害薬と言われるもので、病気の原因となる物質が働かないように、鍵穴をふさいでしまうというものですよね。「CANDDY」は、この阻害薬と概念からして異なり、そもそもの標的自体を消滅させると伺っているのですが?

宮本: はい。壊してなくしてしまいます。実際にいろいろな標的で試してみており、分解ができることについては確認済みです。しかも、分解には人体そのものが備えている酵素を利用するのがCANDDYなので、副作用はかなり少なくなると考えています。

西村:すごく革命的ですよね。人体にもともとあるものを利用するということで、身体に負担が少ないというのは何よりです。場合によっては、薬のあり方自体がガラッと変わってしまう可能性があるのではないでしょうか。

宮本:はい、そのとおりだと思います。これまでの創薬の歴史をお話すると、ある成分がなぜかはわからないけれど効果があるというところからスタートし、時代とともに効く理由がわかってきました。そこから、病気の原因となる標的タンパク質を鍵穴に見立てて、その鍵穴にはまる成分を届け、活性点を抑えるという発想が生まれ、多くの薬が作られてきました。それが「阻害薬」です。創薬の黄金時代を支えてきましたが、実は大きな限界があります。病気の原因となる標的を100%と考えると、阻害薬が作れるのは、全体のわずか25%に過ぎないのです。しかもそれが当たり前と考えられています。しかし一方で、解析技術が進歩したことによって、一人ひとりの標的が明確になりました。そういう時代において、25%にしか薬がない、そんな薬のあり方も変わっていかなければならないタイミングが来ているのです。

西村:なるほど、作用の原理がわかったから、別の方法でもその作用を起こせるんじゃないかというのに着目したのがCANDDYなのですね。すごいというだけではなく、時代を追って薬のあり方が発展しており、そのひとつのフェーズを、宮本さんは創ろうとしているのですね。どのような病気の薬にCANDDY技術を用いられようと考えているのでしょうか。

宮本:がん治療において、標的タンパク質に対して「アンドラッガブル(創薬不可能)」と呼ばれているものが3つあります。KRAS、MYC、TP53と呼ばれる標的で、これに薬ができればがんは克服できる、とも言われています。アンドラッガブルと言われる所以は、鍵穴がなかったり、形が定まらないなどで、阻害薬が結合できないといった理由からなのですが、CANDDYを用いれば薬がつくれる可能性があります。CANDDYは、もともと生体内に備わるタンパク質を分解する酵素(プロテアソーム)を用いて標的そのものを「壊してなくしてしまう」という技術です。標的と結合する部位とプロテアソームと結合する部位から成る「CANDDY分子」 が、標的をプロテアソームに導くのです。そのため、標的にある鍵穴の構造や有無に関わらず、あらゆる標的が治療の対象となるのです。

西村:鍵穴に蓋をするのではなく、鍵穴ごと破壊する。まさにパラダイムシフトですね。

宮本:標的たんぱく質をCANDDY分子で分解に誘導することを「ケミカルノックダウン」と呼んでいます。生命科学にはDNAからRNA、そしてタンパク質へと情報が伝わる「セントラルドグマ」があります。これまで、ゲノム編集(DNA)や核酸医薬(RNA)といった技術が生まれており、次は、最下流の「タンパク質」そのものをノックダウンする技術の時代が訪れています。薬の歴史もそれに伴って変わろうとしていて、その交差するところにCANDDYがあると考えています。

ビジネスモデルの両輪:プラットフォームとパイプライン

西村:2022年に創業されて、事業がはじまって7年が過ぎたいま、どういうことをクリアすれば、CANDDYがより社会に近づいてくるのでしょうか。どのような事業構造を描かれていますか。

宮本: 大きく分けて「プラットフォーム事業」と「パイプライン事業」の二段構えです。プラットフォーム事業では、私たちが開発した技術基盤「CANDDY」を製薬会社に提供し、共同研究を通じて彼らが抱える創薬の課題を解決します。一方で、パイプライン事業では自社でCANDDYによる薬を作り、特定の疾患に対して直接的な解を提示していきます。この両輪を回すことで、未来の「個の医療」を実現しようとしています。

そのための準備として、7年のうち前半部分では、がんのアンドラッガブルターゲットのひとつ「KRAS」を標的として、CANDDYの開発を進め分解できることを確認しました。次に、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のディープテック・スタートアップ支援基金に採択されたことにより、ふたつめのアンドラッガブルターゲットである「MYC」の分解に着手し、これも分解が確認できるまでになっています。

そしてこの技術を持ってして、さらに社会へと近づけるために、まずはプラットフォームの確立が急務と考えています。

西村:なぜプラットフォームなのでしょうか? 具体的にどのようなことを考えられているのでしょうか。

宮本: 私たちの技術「CANDDY」は、標的に結合する「バインダー」と、タンパク質を分解酵素のプロテアソームに導く「CANDDYタグ」のふたつの化合物で構成されています。CANDDYタグはどんな病気のタンパク質に対しても共通して使える土台ですので、一方のバインダー部分だけを標的に合わせて付け替えるだけで、どんな疾患であっても対応できるようになります。バインダーのバラエティは豊かであるほどよいのですが、タンパク質は何万個とあるため、一企業では到底揃えることはできません。一方で、製薬会社には、標的に結合する力はあるけれど、タンパク質の働きを阻害する力がないといった理由で、開発が断念された膨大な化合物のストック、つまりバインダーの芽が眠っています。そういう化合物に、CANDDYタグをつけるだけで、「分解薬」として蘇らせることができます。さまざまな製薬会社と共同研究することで、新薬の開発を同時並行できます。さらに、製薬会社が長年培ってきた「標的への知識」と、CANDDYの技術を組み合わせることで、ゼロから作るよりも創薬のスピードも上げることができます。

また、CANDDYの技術がさまざまなケースで使われ、データが蓄積することで、技術の信頼性と応用力が高まるので、薬そのものを生み出すためのパイプラインも増えていきます。

西村:なるほど。あえていろいろなプレイヤーが入ってくるという価値をとても重視されているのですね。製薬会社のほかにどのようなプレイヤーが入っているのでしょうか?

宮本:自己免疫疾患の臨床医とのコラボレーションも進めています。現在、私たちはNEDOの支援を受け、指定難病である「SLE(全身性エリテマトーデス)」の治療薬開発に取り組んでいます。SLEは20代から30代の若い女性に多く発症する病気ですが、現在は副作用の強い対症療法しかなく、長期間の治療は命に関わるリスクすら伴います。根本的な「分解薬」を、患者さんも臨床医の先生方も切望されているのです。

西村:臨床医の先生方とのコラボレーションには、どのような意義があるのでしょうか。

宮本: 臨床医の方々は、「このタンパク質が原因だ」という標的は特定できているのに、既存の技術ではポケット(結合部位)がないために薬が作れない、というジレンマを抱えています。そこで私たちは「ポケットがなくても、CANDDYなら分解できます」と出口を提供する。先生方の「目の前の患者さんを救いたい」という圧倒的な熱量と私たちの技術が掛け合わさることで、研究は驚異的なスピードで進みます。

西村:自己免疫疾患にも対応できるとなると、幅がすごく広がりますね。そういう意味では、もし、ほかの人がこの技術を独占して自社の利益のみを求めてしまったら……と考えます。CANDDYがプラットフォーム化していくことで、製薬会社もバージョンアップできるうえ、臨床医の方々の熱意にも応えられる。その結果、多くの絶望を抱いた患者が希望を持てるようになりますよね。すごく平和な事業を築かれていると感銘を受けます。そういう方向性は当初から思い描かれていたのでしょうか?

宮本:そうですね。創薬は一企業だけで完結できる時代ではもうありません。そのために、CANDDYを「これならみんなと手をつないで、みんなも成果を出せる」という世界的なプラットフォームに育てていかなければと考えています。

西村:ただ、 技術的に優位であっても、巨大な資本を持つメガファーマ(大手製薬会社)に模倣されるリスクはないのでしょうか。ベンチャーにとって、知財戦略は生命線です。

宮本: おっしゃる通りです。私たちは、CANDDYの基礎となる「コンセプトそのもの」を押さえた非常に広範な特許をワールドワイドで確保しています。単なる手法の一部ではなく、「この理論に沿ってタンパク質を分解する創薬」そのものをカバーする強い特許です。

西村:それはすごい。根本レベルに近いような特許をすでに確保されているのですね。

宮本: はい。この盤石な知財があるからこそ、私たちはあえて技術を独占せず、「プラットフォーム」として開放することができるのです。

2032年、そして絶望なき未来へのロードマップ

西村:創薬には時間がかかるイメージがありますが、社会実装までの時間感覚はどうでしょうか。

宮本: それはとても難しい質問です。わたしたちは一日でも早く患者さんの元へ届けたいという思いをもっています。そのため、2032年に自社パイプラインを臨床試験(治験)へ上げることを目標にしています。ただし、その後の臨床のフェーズはわたしたちがコントロールできないため、読めません。一方で、世界的に「臨床をいかに迅速化するか」というフェーズになっているので、期待をしたいところです。

西村:今回お話を伺って、私たちが生きているうちにその恩恵を受けられるという強い期待感を持ちました。

宮本: ありがとうございます。私たちはNEDOの支援も受け、現在は研究開発メンバーを倍増させる段階にあります。今後は事業開発や財務のプロフェッショナルも迎え入れ、組織をさらに強固にしていきます。同時に、この壮大なチャレンジに対して、リスクを楽しみながら、伴走してくださるパートナーを必要としています。CANDDYが世界に広がることで、創薬の「25%の壁」を壊し、誰もが治療を諦めなくて済む世界を創れる、と強く信じています。

UntroDコメント
既存技術のボトルネックを解消した、極めて現実的なモダリティ

FuturedMeには、創薬そのもののあり方を変える発想があります。標的タンパク質を分解する薬としてPROTACなどが先行してありますが、標的タンパク質に目印をつけるためのユビキチン化に毒性が懸念されるサリドマイド誘導体を使用することや、複雑な構造設計など、多数の課題があります。一方でCANDDYは、これらの課題を科学的・論理的に解決し得る点が特に素晴らしいと感じています。さらに、製薬企業が過去に断念した膨大な化合物ライブラリを「分解薬」として蘇らせる発想は、最小限のリソースで世界に大きなインパクトを与えると考えます。それによって薬の価格が抑えられ、必要とする患者が手に入れられる、という未来を思い描くことができるという点にも大きな可能性を感じます。技術の素晴らしさはもちろんですが、新しい「薬の作り方(モダリティ)」を世界に提案する、という強い意志を代表の宮本さんから感じられます。
(UntroD Capital Japan株式会社 グロースマネージャー 三井 善夫)

聞き手

西村勇哉
NPO法人ミラツク代表理事、株式会社エッセンス 代表取締役 国立研究開発法人理化学研究所未来戦略室 イノベーションデザイナー、大阪大学社会ソリューションイニシアティブ 特任准教授。2011年のミラツク設立以降、大手企業の事業創出に未来構想の設計、独自メディア運営など、アカデミックな視点と圧倒的な行動力でプロジェクトの社会実装を牽引している。

Tokyo Office

〒105-0001
東京都港区虎ノ門2-2-1
住友不動産虎ノ門タワー 17F

contact@untrod.inc

Singapore Office

71 Ayer Rajah Crescent, #06-11/12, Singapore 139951

Malaysia Office

G-A, Block 2330 Century Square, Jalan Usahawan,
Off Persiaran Multimedia, 63000 Cyberjaya, Selangor

contact_global@untrod.inc

プライバシーポリシー ハラスメントポリシー